生活保護の審査請求をしよう

生活保護の質問に答えます。役所の決定に疑問があったら、生活保護の審査請求をしましょう。

<生活保護と過払金(続編)> 【問】役所の担当者のミスで 生活保護費を多く支給され,その保護費の過払分の返還処分を受けたときは,それに従わなければならないのですか?

 6月28日のこのブログで,「役所の担当者のミスで 生活保護費を多く支給された場合でも,その過払分を役所に返還しなければならないのですか?」という質問に対して,都道府県知事に対して返還処分の取消しを求める審査請求を行いましょう。福祉事務所の過失による過払金の全額返還処分については,最近では,原告(生活保護受給者)の主張が認められることが多くなっています。」という回答がありましたが,役所のミスで保護費が多く支払われ,私は,役所のミスであることを知らずに保護費を使い,手元には返還すべき金銭が残っていないにもかかわらず,役所の担当者は何の責任も取らずに,役所から保護費の返還を求められことには納得していません。

 私は,審査請求以外に,役所に対抗する手段はないのでしょうか。

 

【答】

 審査請求を行う以外にも役所に対抗する手段はあります。 それは,役所から,保護費を返還するよう納入通知書が届いても,その納入通知書を無視し,過払いとなった保護費を返還しなければよいのです。

 返還金や徴収金の徴収率を上げるために,役所は,保護費からの天引きという方法をとります。 「保護費からの天引き」というのは,毎月の保護費から 生活保護法第63条返還金や 生活保護法第78条徴収金の一部を あらかじめ差し引き,その残りの保護費を銀行口座に振り込む方法です。

 

 しかし,役所のミスにより保護費を多く支払い,あなたに何も責任がないときは,生活保護法上,「保護費からの天引き」ができないことになっています。 そのため,役所は,あなたに納入通知書を送り,その納入通知書により金融機関で返還金を納付してもらうことになります。

 そこで,あなたは,役所の返還処分に納得できないときは,納入通知書が届いても,過払いとなった保護費を返還しなければ,役所には それに対抗する手段はありません。 役所がとれる方法は,あなたにお願いして,毎月分割で少額ずつ納入通知書により返還してもらうしかないのです。

 

 私は,以前,ケースワーカーをしていたので分かりますが,とにかく役所の担当員は,生活保護業務に関してミスが多く,保護費の支給漏れや過払いは 日常茶飯事です。

 生活保護業務に関してミスが多いことに驚く人もいるかもしれませんが,ケースワーカーや,それを指導・監督する係長(「査察指導員」といいます。)の多くは,3~4年で異動しますので,生活保護制度に詳しい担当者や担当者の数は,極めて少ないのが現状です。

 そのため,ケースワーカーが事務処理にミスをしても,係長は そのミスに気が付かないことが多く,その結果、保護費の支給漏れや過払いが頻繁に生じます。 役所は,事務処理のミスを隠したがるのですが,熊本市は,驚くべきことに,ホームページで,毎月 担当員の事務処理のミスを公表しています。 それを見ると,生活保護業務に関して,毎月平均3件程度のミスが生じていることが分かります。 他の市や県でも,同じくらいのミスが生じているでしょう。

 

 私は,それほどミスの件数が多いのであるならば,ミスが生じないような,ミスが少なくなるような システムをつくればよいのに,と思うのですが, 役所は,IT化が一番遅れている組織であり,未だにIT化があまり進んでおらず,相変わらず 旧態依然としたやり方を続けていますので,事務処理のミスが一向に減ることはありません。 毎年,同じようなミスを繰り返しているのを見ると,同じ役所の人間として,生活保護業務担当者は 本当に頭が悪く,やる気がないのではないかと思います。

 

 そのため,役所のミスによる保護費の過払金については,役所から返還決定通知書や納入通知書が届いても,返還することを辞めましょう。 役所のミスによる保護費の過払金については,返還しなくても,生活保護法上は 罰則はありません。 ミスをした担当者や役所に責任を取らせましょう。

 そうしないと,役所は,今後も事務処理のミスを続け,ミスをした担当者や役所は 何も責任を取らずに,生活保護を受けている人たちに多大な迷惑をかけ続けます。

 返還金の納付を拒否しないと,役所は,いつまで経っても,ミスが生じないような,ミスが少なくなるような システムをつくらないでしょう。

 

 役所のミスによる保護費の過払金の返還問題については,6月28日のこのブログを参照してください。

 

 

(参考)

生活保護

(費用返還義務)

第63条 被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

 

(費用等の徴収)

第77条の2 急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けた者があるとき(徴収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときを除く。)は,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村の長は,第63条の保護の実施機関の定める額の全部又は一部をその者から徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金は,この法律に別段の定めがある場合を除き,国税徴収の例により徴収することができる

 

第78条の2 保護の実施機関は,被保護者が,保護金品(金銭給付によって行うものに限る。)の交付を受ける前に,厚生労働省令で定めるところにより,当該保護金品の一部を,第77条の2第一項又は前条第1項の規定により保護費を支弁した都道府県又は市町村の長が徴収することができる徴収金の納入に充てる旨を申し出た場合において,保護の実施機関が当該被保護者の生活の維持に支障がないと認めたときは,厚生労働省令で定めるところにより,当該被保護者に対して保護金品を交付する際に当該申出に係る徴収金を徴収することができる

2 第55条の4第1項の規定により就労自立給付金を支給する者は,被保護者が,就労自立給付金の支給を受ける前に,厚生労働省令で定めるところにより,当該就労自立給付金の額の全部又は一部を,第77条の2第1項又は前条第1項の規定により保護費を支弁した都道府県又は市町村の長が徴収することができる徴収金の納入に充てる旨を申し出たときは,厚生労働省令で定めるところにより,当該被保護者に対して就労自立給付金を支給する際に当該申出に係る徴収金を徴収することができる。

3 前2項の規定により第77条の2第1項又は前条第1項の規定による徴収金が徴収されたときは,当該被保護者に対して当該保護金品(第1項の申出に係る部分に限る。)の交付又は当該就労自立給付金(前項の申出に係る部分に限る。)の支給があつたものとみなす。

 

 

生活保護法施行規則

厚生労働省令で定める徴収することが適当でないとき)

第22条の3 法第77条の2第1項の徴収することが適当でないときとして厚生労働省令で定めるときは,保護の実施機関の責めに帰すべき事由によって,保護金品を交付すべきでないにもかかわらず,保護金品の交付が行われたために,被保護者が資力を有することとなったときとする。