生活保護の審査請求をしよう

生活保護の質問に答えます。役所の決定に疑問があったら、生活保護の審査請求をしましょう。

<生活保護とケースワーカー(続編)> 【問】生活保護業務については,なぜ ケースワーカーによる事務処理のミスが多いのですか?

 熊本市は,毎月,市役所の業務上のミスを公表していますが,熊本市に限らず,生活保護業務については,ケースワーカーによる事務処理のミスが多いと聞いています。 生活保護業務については,なぜ ケースワーカーによる事務処理のミスが多いのですか。

 

【答】

 ケースワーカーのことについて,再び書きたいと思います。

 生活保護業務に限らず,役所の業務には事務処理の誤りが多々見られます。 最近では,マイナンバー関連で,担当者の入力ミス等がニュースになっていますが,人間がやることですから,一定のヒューマン・エラーは避けられないと思います。 そのため,担当者の入力ミスなどを,電算的に,ハード的に,又はソフト的に エラーを見つけ排除するシステムの構築が必要になりますが,未だにシステム構築が進まず,多くを個人の能力に頼っている状況です。

 

 事務処理のミスを防ぐためには,内容のチェックに多くの時間をかけるか,又は 別の人がチェックするようにすればよいのですが,そうすると,勤務時間中では時間が足りず,残業時間がますます増えていくことになります。

 

 数年前から「働き方改革」として,残業時間を減らす取り組みが行われていますので,あまり残業時間が多くなりすぎますと,上司から残業時間を減らすように言われます。 誰も好き好んで残業しているわけではないのですが,上司も立場上,残業時間を減らすよう指導せざるを得ないので,結局,残業しても それを上司に申告せず,残業手当も申請しないという サービス残業が増えていくことになります。

 

 役所は午後8時を過ぎると,冷房が切られる職場が多いので,残った仕事を家に持ち帰って,家で仕事をする人も多いのですが,個人情報は家に持ち帰ることができないので,家でできる仕事も限られます。

 

 また,ケースワーカーの残業時間が多い理由の一つに,昼間は 生活保護受給者,病院,又は 介護施設等からの電話への対応や,生活保護受給者の来所対応などにより,仕事が中断されることが多く,仕事に集中できないため,仕事が予定どおりには進まず,結局,電話対応や来客対応をしなくてよい 午後5時半以降に事務処理等の仕事を片付けざるを得ないということがあります。

 

 民間企業であれば,メールによる相手方とのやり取りが多いので,仕事が中断されることは少ないのですが,生活保護受給世帯は,高齢者世帯が半数を超え,パソコンを持っていなかったり,パソコンを使えない人もいますので,メールによる相手方とのやり取りは,ほとんどありません。 そのため,相変わらず 電話や郵便物,訪問調査,来所面接による相手方とのやり取りが大部分であり,一向に残業時間が減りません。

 そうすると,事務処理のチェックにかける時間を制限せざるを得なくなり,事務処理のミスは あまり減らないということになります。

 

 また,8月3日のこのブログに書いたように,ケースワーカー1人当たりの担当世帯数が増え続けていることも,事務処理のチェックにかける時間が制限され,事務処理のミスが減らない原因の一つです。

現在,1つの係の職員数は8~9人で,ケースワーカーの半数は女性であり, 20代や30代前半の女性職員が多いため,毎年,1つ又は2つの係に1人の割合で,産休・育休を取る女性職員がいます。 職員が休職しても,簡単には代わりの職員の補充はないので,休職した職員が担当していた仕事を,他の職員に振り分けて担当することになり,ケースワーカー1人当たりの担当世帯数は増加し,ますます残業時間が増えてていきます。

 

 そのため,仕事に追われ,精神を病んで 休職するケースワーカーが,毎年,一定数 生じることになります。 私は,ケースワーカー歴10年ですが,その10年間に精神を病んで病気休職した職員数は10人を超えますので,毎年,1福祉事務所に1~2人は病気休職に追い込まれる職員が出てきます。 精神的に疲れている職員は,周りの職員もなんとなく気が付きますので,上司も,その職員の担当世帯数を減らし,できるだけ負担を軽くするような対策をとったりしますが,そうすると,その分,他の職員の負担が増え,悪循環となります。

 

 それならば,役所の職員定数を増やし,ケースワーカーの数を増やせばよいと思うのですが,役所の職員定数を増やすことはかなり難しく,逆に市民等から,職員数を減らすべきとの声が上がりますので,新型コロナの影響も大きく,景気後退や物価上昇等により,この数年,被保護世帯数が増加しているにもかかわらず,ケースワーカーの数は増えないため,ケースワーカー1人当たりの担当世帯数は増加し続け,予算の制約もあり,残業時間も増やせず,事務処理のチェックにかける時間が少なくなり,事務処理のミスは 相変わらず減らないということになります。

 

 ケースワーカーの数を増やすことができず,残業時間も増やせないないならば,職員の個人の能力に頼らず,電算的に,ハード的に,又は ソフト的にエラーを排除するようなシステムを早く構築すればよいのですが,役所では 未だにシステム構築が進まず,相変わらず 個人の能力に頼っている状況です。