生活保護の審査請求をしよう

生活保護の質問に答えます。役所の決定に疑問があったら、生活保護の審査請求をしましょう。

<生活保護と自動車の保有> 【問】自動車を処分した後でないと,生活保護は受けられないのですか?

 私は,病気で働くことができず,生活に困っていますので,生活保護の申請をしようかと考えています。

 しかし,知人から,自動車を所有している場合は,その自動車を処分した後でないと,生活保護は申請できないと言われましたが,本当に自動車を処分した後でないと,生活保護は申請できないのでしょうか。

 

【答】

 病気で働くことができず,生活に困っていて,自動車を所有しているときは,自動車を処分した後でないと,生活保護は申請できないということはありません。 まず生活保護の申請を行い,保護決定後に自動車を処分すれば大丈夫です。

 また,自動車の保有がすべて認められないわけではなく,次の条件を満たす場合は,自動車の保有が認められたり,自動車の処分指導が保留されたりしますので,役所の担当者に相談しましょう。

 

<自動車の保有が認められている場合>

① 障害者が自動車により通勤する場合

② 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合

③ 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車により通勤する場合

④ 深夜勤務等の業務に従事している者が自動車により通勤する場合

 ただし,上記の②~④については,次の4つの条件のすべてを満たす必要があります。

・世帯状況からみて,自動車による通勤がやむを得ないものであり,かつ,当該勤務が当該世帯の自立の助長に役立っていると認められること。

・当該地域の自動車の普及率を勘案して,自動車を保有しない低所得世帯との均衡を失しないものであること。

自動車の処分価値が小さく((注) 平成元年度までは,「おおむね10万円以下」と記載されていました。),通勤に必要な範囲の自動車と認められるものであること。

・当該勤務に伴う収入が自動車の維持費を大きく上回ること。

 

<自動車の処分指導が保留される場合>

 通勤用自動車については,保護の開始申請時においては失業や傷病により就労を中断しているが,概ね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者であって,保有する自動車の処分価値が小さいと判断される場合

 なお,概ね6か月経過後,保護から脱却していない場合においても,保護の実施機関の判断により,その者に就労阻害要因がなく,自立支援プログラム又は自立活動確認書により具体的に就労による自立に向けた活動が行われている者については,保護開始から概ね1年の範囲内において,処分指導を行わないものとして差し支えないとされています。

 

 また,自動車の保有条件の「自動車の処分価値が小さい」とは,平成元年度までは,(  )書きで「おおむね10万円以下」と記載されていましたが,平成2年度から「おおむね10万円以下」という記載が削除されましたので,10万円を少し超えても(目安としては,12~15万円くらいか。),「処分価値が小さい」と判断できると思います。

 さらに,あくまでも自動車の処分価値であり,販売価格とは異なりますので,自動車の処分価値は中古車の販売価格と比べて,かなり低いと思われます。 例えば,中古車の販売価格が30万円のときは,その処分価値は 15万円以下くらいになると思いますので,詳しくは,中古車販売所等に相談してください。

 

 

(参考)

生活保護手帳

〇課長通知 問(第3の9)

(問)次のいずれかに該当する場合であって,自動車による以外に通勤する方法が全くないか,又は通勤することがきわめて困難であり,かつ,その保有が社会的に適当と認められるときは,次官通知第3の5にいう「社会通念上処分させることを適当としないもの」として通勤用自動車の保有を認めてよいか。

1 障害者が自動車により通勤する場合

2 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合

3 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車により通勤する場合

4 深夜勤務等の業務に従事している者が自動車により通勤する場合

 

(答)

 お見込みのとおりである。

なお,2,3及び4については,次のいずれにも該当する場合に限るものとする。

(1)世帯状況からみて,自動車による通勤がやむを得ないものであり,かつ,当該勤務が当該世帯の自立の助長に役立っていると認められること。

(2)当該地域の自動車の普及率を勘案して,自動車を保有しない低所得世帯との均衡を失しないものであること。

(3)自動車の処分価値が小さく((注) 平成元年度までは,「おおむね10万円以下」と記載されていた。),通勤に必要な範囲の自動車と認められるものであること。

(4)当該勤務に伴う収入が自動車の維持費を大きく上回ること。

 

 

〇課長通知問(第3の9の2)

(問)

 通勤用自動車については,現に就労中の者にしか認められていないが,保護の開始申請時においては失業や傷病により就労を中断しているが,就労を再開する際には通勤に自動車を利用することが見込まれる場合であっても,保有している自動車は処分させなくてはならないのか。

 

(答)

 概ね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者であって,保有する自動車の処分価値が小さいと判断されるものについては,次官通知第3の2「現在活用されてはいないが,近い将来において活用されることがほぼ確実であって,かつ,処分するよりも保有している方が生活維持に実効があがると認められるもの」に該当するものとして,処分指導を行わないものとして差し支えない。ただし,維持費の捻出が困難な場合についてはこの限りではない。

 また,概ね6か月経過後,保護から脱却していない場合においても,保護の実施機関の判断により,その者に就労阻害要因がなく,自立支援プログラム又は自立活動確認書により具体的に就労による自立に向けた活動が行われている者については,保護開始から概ね1年の範囲内において,処分指導を行わないものとして差し支えない

 なお,処分指導はあくまで保留されているものであり,当該求職活動期間中に車の使用を認める趣旨ではないので,予め文書により「自動車の使用は認められない」旨を通知するなど,対象者には十分な説明・指導を行うこと。 ただし,公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住している者については,求職活動に必要な場合に限り,当該自動車の使用を認めて差し支えない。

 また,期限到来後自立に至らなかった場合については,通勤用の自動車の保有要件を満たす者が通勤用に使用している場合を除き,速やかに処分指導を行うこと。

 

 

生活保護手帳・別冊問答集

〇問3-14 自動車の保有

(問)

  課第3の9及び12以外に被保護者が自動車を保有することが認められる場合は,どのような場合か。

 

(答)

 生活用品としての自動車は,単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば,地域の普及率の如何にかかわらず,自動車の保有を認める段階には至っていない。 事業用品としての自動車は,当該事業が事業の種別,地理的条件等から判断して,当該地域の低所得世帯との均衡を失することにならないと認められる場合には,保有を認めて差し支えない。

 なお,生活用品としての自動車については,原則的に保有は認められないが,なかには,保有を容認しなければならない事情がある場合もあると思われる。 かかる場合は,実施機関は,県本庁及び厚生労働省に情報提供の上,判断していく必要がある。

 

〇問3-15 自動車による以外の方法で通勤することがきわめて困難な身体障害の程度

(問)

 通勤用自動車の保有が認められる身体障害者の範囲を示されたい。

 

(答)

 自動車による以外の方法で通勤することがきわめて困難な身体障害者の判断は,その身体障害者のおかれた身体機能(特に歩行機能)の程度によるので,一概に等級をもって決めることはできないが,自動車税等が減免される障害者(下肢・体幹の機能障害者又は内部障害者で身体障害者手帳を所持する者については,自動車税,取得税が減免される。)を標準とし,障害の程度,種類及び地域の交通事情,世帯構成等を総合的に検討して,個別に判断することとされたい。

 

〇問3-16 公共交通機関の利用が著しく困難な地域

(問)

 課第3の9中の2及び3にいう「公共交通機関の利用が著しく困難な地域」とは,具体的にはどのような地域か。

 

(答)

 「公共交通機関の利用が著しく困難」であるか否かについては,一律の基準を示すことは困難であるが,例えば,駅やバス停までの所要時間や,公共交通機関の1日あたりの運行本数,さらには当該地域の低所得者世帯の通勤実態等を勘案したうえで,自動車によらずに通勤することが現実に可能かどうかという観点から,実施機関で総合的に判断されたい。

 

〇問3-17 保育所等の送迎のための通勤用自動車の保有

(問)

 自宅から勤務先までは公共交通機関等での通勤が可能であるが,子の託児のために保育所等を利用しており,保育所等へ送迎して勤務するためには自動車による以外に通勤する方法が全くないか,又は通勤することがきわめて困難である場合には,課第3の9中の3に該当するものとして,通勤用自動車の保有を認めて差し支えないか。

 

(答)

 自宅から勤務先までの交通手段が確保されている場合には,まず公共交通機関等の利用が可能な保育所等への転入所を検討すべきである。

 しかしながら,課第3の9の答に示された要件に加え,当該自治体の状況等により公共交通機関の利用が可能な保育所等が全くない場合 若しくは あっても転入所が極めて困難である場合,又は転入所することが適当ではないと福祉事務所が判断する場合においては,お見込みのとおり取り扱って差し支えない。

 

 

〇問3-18 公共交通機関の利用が著しく困難な障害の程度

(問)

 課第3の12にいう「障害の状況により,利用し得る公共交通機関が全くないか又は公共交通機関を利用することが著しく困難」とは,具体的にどのような者が対象となるのか。

 

(答)

 例えば,身体障害にあっては下肢,体幹の機能障害,内部障害等により歩行に著しい障害を有する場合,知的障害にあっては多動,精神障害にあってはてんかんが該当すると考えられる。

 なお,身体障害の場合に限り,現時点では障害の程度の判定がされていないが,近い将来,身体障害者手帳等により障害の程度の判定を受けることが確実に見込まれる者について保有を認めて差し支えない。ただし,障害認定を受けることができなかった場合には,速やかに処分指導を行うこと。

 

 

〇問3-19 障害者の通院等の用途の自動車の維持費

(問)

 障害者の通院等の用途の自動車保有に際し,維持費について援助が可能な扶養義務者等がいない場合,障害者加算の範囲で維持費を賄うことは認められるか。

 

(答)

 維持費について確認のうえ,障害者加算(他人介護料を除く)の範囲で賄われる場合については,課第3の12の(4)の他法他施策の活用等の等に含まれるものとして,お見込みのとおり取り扱って差し支えない。