生活保護の審査請求をしよう

生活保護の質問に答えます。役所の決定に疑問があったら、生活保護の審査請求をしましょう。

<生活保護と自動車の運転> 【問】生活保護を受けている人は,他人から自動車を借りて運転することも,認められないのですか?

 私は,生活保護を受けており,親戚に頼まれ荷物を運ぶ必要がありましたが,自動車を持っていないので,先日,友人から自動車を借りて,荷物を運びました。

 しかし,知人から,生活保護を受けている場合は,知人等から自動車を借りて運転することも禁止されていると聞きました。

 生活保護を受けている場合は,自動車を所有することは認められてないということは知っていますが,本当に知人等から自動車を借りて運転することも禁止されているのでしょうか。

 

【答】

 生活保護法では,生活保護受給者は 自動車を運転することを禁止されているわけではありませんが,生活保護を受けている場合は,一定の要件を満たす場合以外は,自動車の「保有」を認められていません。 また,この「保有」には,所有権以外に,知人等から借りて利用する場合も含むとされています。

 生活保護手帳・別冊問答集」「問3-20 他人名義の自動車利用」には,「生活保護における資産の保有とは,次第3に示してあるとおり,最低生活の内容としてその保有又は利用をいうものであって,その資産について,所有権を有する場合だけでなく,所有権が他の者にあっても,その資産を現に占有し,利用することによって,それによる利益を享受する場合も含まれるものである。 したがって,自動車の使用は,所有又は借用を問わず原則として認められないものであり」と記載されています。

 

 生活保護を受けている人が,知人等の他人の自動車を借りて運転することが認められていない理由は,仮に他人の自動車を借りて運転することを認めると,本当は自分が所有しているものであっても,形式的に他人から借りたという形をとって,自動車の所有禁止を逃れようとする人がいるためであると思われます。

 

 これは,借入金を収入認定することに似ています。 借入金が収入認定される理由は,仮に借入金を収入認定しなくてもよいとすると,実際に収入(返済しなくてよいもの)であっても,形式的に借入金という形をとって,収入認定を逃れようとする人がいるためです。

 

 しかし,生活保護を受けている人が,自動車を借りて運転することがすべて認められていないわけではないと思います。 生活保護手帳・別冊問答集」「問3-20 他人名義の自動車利用」には,「その資産について,所有権を有する場合だけでなく,所有権が他の者にあっても,その資産を現に占有し,利用することによって,それによる利益を享受する場合も含まれる」とされており,常時占有するのではなく,例えば,年に2~3回,知人等から自動車を借りたり,レンタカーを借りて,家族でドライブしたり,荷物を運んだりすることまで禁止されているわけではありません。

 

 生活保護手帳・別冊問答集」「問3-20 他人名義の自動車利用」には,「特段の緊急かつ妥当な理由が無いにもかかわらず,遊興等 単なる利便のため 度々 使用することは,法第60条の趣旨からも,法第27条による指導指示の対象となるものである。これは,最低生活を保障する生活保護制度の運用として国民一般の生活水準,生活感情を考慮すれば,勤労の努力を怠り,遊興のため 度々 自動車を使用するという生活態度を容認することも,またなお不適当と判断されることによるものである。」と記載されており,また,生活保護を受けている人が,生活保護法で自動車を運転することまで禁止されているわけではないので,年に2~3回,知人等から自動車を借りたり,レンタカーを借りて,家族でドライブしたり,荷物を運んだりすることは,当然,許されるものです。

 

 つまり,「特段の緊急かつ妥当な理由が無いにもかかわらず,遊興等単なる利便のため度々使用すること」は,認められていませんが,特段の緊急かつ妥当な理由があれば,又は度々使用するのでなく,年に数回利用するのであれば,他人から自動車を借りて運転することは認められるということになります。

 

 

(参考)

生活保護手帳・別冊問答集

問3-20 他人名義の自動車利用

(問)

 資産の保有とは,所有のみをいうものか。例えば,自動車の保有を認められていない者が,他人名義の自動車を一時借用を理由に遊興等のために使用している場合は,どのようにすべきか。

 

(答)

 生活保護における資産の保有とは,次第3に示してあるとおり,最低生活の内容としてその保有又は利用をいうものであって,その資産について所有権を有する場合だけでなく,所有権が他の者にあっても,その資産を現に占有し,利用することによって,それによる利益を享受する場合も含まれるものである。

 設問の場合には,特段の緊急かつ妥当な理由が無いにもかかわらず,遊興等単なる利便のため度々使用することは,法第60条の趣旨からも,法第27条による指導指示の対象となるものである。これは,最低生活を保障する生活保護制度の運用として国民一般の生活水準,生活感情を考慮すれば,勤労の努力を怠り,遊興のため度々自動車を使用するという生活態度を容認することも,またなお不適当と判断されることによるものである。