生活保護の審査請求をしよう

生活保護の質問に答えます。役所の決定に疑問があったら、生活保護の審査請求をしましょう。

<生活保護と借金と収入認定> 【問】なぜ借金は 収入として認定されるのですか?

 私は,生活保護を受けていますが,先日,財布を落とし,お金がなかったので,遠くに住む友人に1万円を借りて,私の銀行口座に振り込んでもらい,その1万円は,後日,友人に返済しました。

 しかし,私が友人から1万円を借りたことが役所に分かり,その1万円は収入として認定され,保護費から減らされました。

 私は,友人から借りた金は,返済したにもかかわらず,なぜ収入として認定されるのでしょうか。

 

【答】

 生活保護上,給与や年金,仕送りなど,収入については,原則として収入として認定され,保護費が減額されます。 また,借入金についても,収入として認定され,その分の保護費が減額されます

 

 「生活保護手帳」等には,借入金が収入認定の対象となるということは明確には書いてありませんが,局長通知 第8-2-(3)に「貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられることにより収入として認定しないものは,次のいずれかに該当し,かつ,貸付けを受けるについて保護の実施機関の事前の承認があるものであって,現実に当該貸付けの趣旨に即し使用されているものに限ること。」と記載されていますので,これに該当せず,貸付けを受けるについて保護の実施機関の事前の承認がないものについては,収入認定されるということになります。

 

 借入金が収入認定される理由は,仮に借入金を収入認定しなくてもよいとすると,実際に収入(返済しなくてよいもの)であっても,形式的に借入金という形をとって,収入認定を逃れようとする人がいるためであると思います。

 

 また,生活保護受給者にお金を借りることを認めると,あちこちから借金をして,返済できなくなる恐れがあるためであると思われます。

 それに,生活保護法第60条(生活上の義務)の「被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,自ら,健康の保持及び増進に努め,収入,支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り,その他生活の維持及び向上に努めなければならない。」という規定に違反する恐れもあります。

 

 しかし,借入金のすべてが認められないわけではなく,社会福祉協議会からの借入金や高校の奨学金など(からの借入金であっても),役所が事前に借入れを認めたものについては,収入認定の対象にはなりませんし,その貸付金の返済金(償還金)が,必要経費として収入から控除される場合もありますので,事前に役所の担当者に相談しましょう。

 なお,次に,収入認定の対象とならない収入を記載します。

 

 

(参考)

収入として認定しないものの取扱いについて

〇次官通知 第8-3

(3)次に掲げるものは,収入として認定しないこと。

 ア 社会事業団体その他(地方公共団体及びその長を除く。)から被保護者に対して 臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭であって,社会通念上収入として認定することが適当でないもの

 イ 出産,就職,結婚,葬祭等に際して贈与される金銭であって,社会通念上収入として認定することが適当でないもの

 ウ 他法,他施策等により貸し付けられる資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額

 エ 自立更生を目的として恵与される金銭のうち当該被保護世帯の自立更生のためにあてられる額

 オ 災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金,保険金又は見舞金のうち当該被保護世帯の自立更生のためにあてられる額

 カ 保護の実施機関の指導又は指示により,動産又は不動産を売却して得た金銭のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額

 キ 死亡を支給事由として臨時的に受ける保険金(オに該当するものを除く。)のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額

 ク 高等学校等で就学しながら保護を受けることができるものとされた者の収入のうち,次に掲げるもの(ウからキまでに該当するものを除く。)

 (ア)生活保護法による保護の基準 別表第7「生業扶助基準」に規定する高等学校等就学費の支給対象とならない経費(学習塾費等を含む。)及び高等学校等就学費の基準額で賄いきれない経費であって,その者の就学のために必要な最小限度の額

 (イ)当該被保護者の就労や早期の保護脱却に資する経費に充てられることを保護の実施機関が認めた場合において,これに要する必要最小限度の額

 ケ 心身障害児(者),老人等社会生活を営むうえで特に社会的な障害を有する者の福祉を図るため,地方公共団体又はその長が条例等に基づき定期的に支給する金銭のうち支給対象者一人につき8,000円以内の額(月額)

 コ 独立行政法人福祉医療機構法第12条第1項第10号に規定する心身障害者扶養共済制度により地方公共団体から支給される年金

 サ 地方公共団体又はその長から国民の祝日たる敬老の日又は子供の日の行事の一環として支給される金銭

 シ 現に義務教育を受けている児童が就労して得た収入であって,収入として認定することが適当でないもの

 ス 戦傷病者戦没者遺族等援護法による弔慰金又は戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法による特別弔慰金

 セ 未帰還者に関する特別措置法による弔慰料(同一世帯内に同一の者につきスを受けることができる者がある場合を除く。)

 ソ 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律により支給される医療特別手当のうち36,580円並びに同法により支給される原子爆弾小頭症手当,健康管理手当,保健手当及び葬祭料

 タ 戦没者等の妻に対する特別給付金支給法,戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法又は戦没者の父母等に対する特別給付金支給法により交付される国債の償還金

 チ 公害健康被害の補償等に関する法律により支給される療養手当及び同法により支給される次に掲げる補償給付ごとに次に定める額

 (ア)障害補償費(介護加算額を除く。)

   ・障害の程度が公害健康被害の補償等に関する法律施行令第10条に規定する表(「公害障害等級表」という。)の特級又は一級に該当する者に支給される場合    34,290円

   ・障害の程度が公害障害等級表の二級に該当する者に支給される場合  17,140円

   ・障害の程度が公害障害等級表の三級に該当する者に支給される場合  10,300円

 (イ)遺族補償費                            34,290円

 

 

〇局長通知 第8-2

(1)社会事業団体その他が被保護者に対して支給する金銭であって,当該給付の資金が,地方公共団体の予算措置によりまかなわれているものは,次官通知第8の3の(3)のアとして取り扱うことは認められないこと。

 

(2)被保護者に対して現物が給与された場合は,被贈与資産として取扱い,処分すべきものがあれば売却させてその収入を認定すること。ただし,就労の対価として現物が給与されたときは,その物品の処分価値により金銭換算のうえ,500円を控除した額を就労収入として認定すること。

 

(3)貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられることにより収入として認定しないものは次のいずれかに該当し,かつ,貸付けを受けるについて保護の実施機関の事前の承認があるものであって,現実に当該貸付けの趣旨に即し使用されているものに限ること。

 

  ア 事業の開始又は継続,就労及び技能修得のための貸付資金

  イ 就学資金(高等学校等就学費の支給対象とならない経費(学習塾費等を含む。)及び 高等学校等就学費の基準額又は学習支援費でまかないきれない経費であって,その者の就学のために必要な最小限度の額にあてられる場合に限る。)

  ウ 医療費又は介護等費貸付資金

  エ 結婚資金

  オ 国若しくは地方公共団体により行なわれる貸付資金又は国若しくは地方公共団体の委託事業として行なわれる貸付資金であって,次に掲げるもの

  (ア)住宅資金又は転宅資金

  (イ)老人又は身体障害者等が,機能回復訓練器具及び日常生活の便宜を図るための器具を購入するための貸付資金

  (ウ)配電設備又は給排水設備

  (エ)国民年金の受給権を得るために必要な任意加入保険料のための貸付資金

  (オ)日常生活において利用の必要性が高い生活用品を緊急に購入するための貸付資金

 

(4)自立更生のための恵与金,災害等による補償金,保険金若しくは見舞金,指導,指示による売却収入又は死亡による保険金のうち,当該被保護世帯の自立更生のためにあてられることにより収入として認定しない額は,直ちに生業,医療,家屋補修等自立更生のための用途に供されるものに限ること。 ただし,直ちに生業,医療,家屋補修,就学等にあてられない場合であっても,将来それらにあてることを目的として適当な者に預託されたときは,その預託されている間,これを収入として認定しないものとすること。

 また,当該金銭を受領するために必要な交通費等及び補償金等の請求に要する最小限度の費用は,必要経費として控除して差しつかえない。

 

 (5)(3)の承認又は(4)の収入として認定しない取扱いを行なうに際して,当該貸付資金,補償金が当該世帯の自立更生に役立つか否かを審査するため必要があるときは,自立更生計画を徴すること。

 

 (6)次官通知第8の3の(3)のケに掲げる金銭の取扱いについては,次によること。

  ア 社会生活を営むうえで特に社会的な障害のある者の福祉を図るため地方公共団体又はその長が支給する金銭に該当するものは,次に掲げる金銭であること。

   (ア) 心身障害児(者)の福祉を図るために支給される金銭

   (イ) 老人の福祉を図るために支給される金銭

   (ウ) 母子世帯に属する者の福祉を図るために支給される金銭

   (エ) 多子世帯に属する者の福祉を図るために支給される金銭

   (オ) 災害等によって保護者を失った児童の福祉を図るために支給される金銭

   (カ) (ア)から(オ)までに掲げる金銭に準ずるもの

 

  イ アの(カ)に該当するものとして取り扱う場合又は同一人に対しアの(ア)から(カ)までに掲げる金銭が重複して支給される等特別な事由があり,特別な取扱いを必要とすると認められる場合は,都道府県知事は,厚生労働大臣に情報提供すること。

 

 

生活保護手帳・別冊問答集

〇問8-40 一般法人又は私人からの貸付金

(問)

 自営業を営んでいる被保護者が,事業の継続に必要な資金を公共団体以外の法人又は私人から貸付けを受けたときにおいても貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられるものとして収入として認定しないでよいか。

 

(答)

 自立更生を目的とするものであって,事前に福祉事務所長の承認があり,かつ,現実に当該貸付けの趣旨に即し使用されているものであれば,公共的なものに限らず 一般の法人,私人からの貸付金であっても収入として認定しなくても差し支えない