生活保護の審査請求をしよう

生活保護の質問に答えます。役所の決定に疑問があったら、生活保護の審査請求をしましょう。

<生活保護と自動車の処分> 【問】自動車の処分指導に従わなかったときは,生活保護が廃止されるのですか?

 私は70歳であり,生活保護を受けていますが,足が悪いので,通院や買物などに自動車を利用しています。 しかし,役所の担当者から,「あなたは足が悪いが,他からの援助がなく,身体障害者手帳4級であり 障害者加算の対象でないので,自動車維持費が 他からの援助等により確実に賄われる見通しがなく,通院用としての自動車の保有を認める要件を満たしていない。 そのため,早急に自動車を処分する必要があり,自動車の処分指導に従わないときは,生活保護を廃止しなければならない。」と言われました。

 しかし,私が所有する自動車は,購入後 約16年を経過し,処分価値はなく,足が悪いので,自動車がないと,通院や買物などに支障があります。

 私は,自動車を処分しないと,生活保護を廃止されるのでしょうか。

 

【答】

 通院用としての自動車の保有を認める要件の一つに,「自動車の維持に要する費用(ガソリン代を除く。)が他からの援助(維持費に充てることを特定したものに限る。),他施策の活用等により,確実にまかなわれる見通しがあること。」というものがあります。

 また,自動車の維持費について援助が可能な扶養義務者等がいないときは,障害者加算の範囲で維持費を賄うことを認めて差し支えないこととされています。

 そこで,あなたの場合は,自動車の維持費について扶養義務者等からの援助がなく,身体障害者手帳4級であり,障害者加算の対象ではないため,通院用としての自動車の保有要件を満たしていないことから,自動車の処分指導の対象になります。

 

 しかし,過去の自動車に係る判例を見ると,自動車の処分指導(文書指導指示)に従わなかったため,保護の停止又は廃止処分を行ったことに対する処分取消訴訟において,役所が敗訴した事例がいくつもあります。

 例えば,平成21年5月29日の福岡地裁判決(峰川訴訟)では,「被保護者が通院や移動に要する費用やサービスを新たに要求したものではなく,虚偽の申告をしたり,不正の手段を用いたわけでもないので,被保護者が自動車の処分指導に従わなかったことが保護の停止処分を行うべきほど悪質なものとまでは言うことができず被保護者は保護の停止によって直ちに困窮状態に陥ることは容易に予想される状況にあったと考えられるから,その実情を十分に考慮せずに保護の停止処分を行い,その結果,被保護者は実際に著しい生活の困窮状態に陥ったことからすれば,停止処分は,相当性を欠き,法第62条3項(指導指示違反による変更・停廃止)に違反し,違法であったというべきである。」として,生活保護の停止処分が取り消され,役所が敗訴しています。

 

 また,日本弁護士連合会は,「被保護世帯について,処分価値の小さい自動車保有を原則として認めるべきであり,自動車の保有要件(厚生労働省通知)は廃止すべきである。」と主張しています(H22年5月6日,日弁連意見書)。 その理由は,「 自動車の普及率は83%~84%に達しており,生活用品の保有容認の目安である70%を超えていること 処分価値が小さい自動車を処分しても売却金はわずかであり,処分する必要性が低いこと 処分価値のない自動車は資産とは考えられないこと」などです。 また,処分価値がないか又は小さい自動車であっても 処分指導に従わなかった場合は,保護の停止又は廃止という重い処分が行われること比例原則違反を批判しています。

 

 これに対して,裁判所は,厚生労働省の主張を踏まえ,「自動車の普及率は8割を超えているが,低所得者層の普及率は5割を切っており,低所得者にとっては,自動車は今なお高価なものであり,また,自動車は,処分価値がないか又は小さいものであっても,保有しているだけで維持管理費がかかり,その経費は保護費をやり繰りして捻出する必要があるので,自動車の保有要件(厚生労働省通知)は,違法ではない(又は違法とまでは言えない)。」としているものの,「自動車の処分指導違反による保護の停廃止処分については,指導違反の程度に対して処分が重すぎるため,相当性を欠き,法62条3項に違反し違法である。」として,保護の停止又は廃止処分を取り消す旨の判断を示すことが多いようです(増永訴訟:H10.5.26福岡地裁判決, 峰川訴訟:H21.5.29福岡地裁判決, 枚方訴訟:H25.4.19大阪地裁判決。 いずれも保護の停止・廃止・却下処分が取り消され,市が控訴しなかったので,市の敗訴が確定しています。)。

 

 「比例原則」とは,達成されるべき目的とそのために取られる手段としての権利・利益の制約との間に均衡を要求する原則です。 例えば、「雀を撃つのに 大砲を使ってはならない」という言葉で説明されることが多いようです。 このため,比例原則に基づき行政目的を達成するときは,実現したい行政目的と市民の権利と利益を阻害しないために,行政目的が達成可能な最も規制が低い実現手段を用いることになります。

 

 先の述べた峰川訴訟において,福岡地裁は,「被保護者が通院や移動に要する費用やサービスを新たに要求したものではなく,虚偽の申告をしたり,不正の手段を用いたわけでもないので,被保護者が自動車の処分指導に従わなかったことが,保護の停止処分を行うべきほど 悪質なものとまでは言うことができず,被保護者は保護の停止によって直ちに困窮状態に陥ることは容易に予想される状況にあったと考えられるから,その実情を十分に考慮せずに保護の停止処分を行い,その結果,被保護者は実際に著しい生活の困窮状態に陥ったことからすれば,停止処分は,相当性を欠き,法第62条3項(指導指示違反による変更・停廃止)に違反し,違法であったというべきである。」と判示しているとおり,自動車の処分指導に違反した生活保護受給者に対して行った生活保護の停止処分が,違反の内容・程度と比較して,あまりにも重すぎる処分であり,比例原則に違反し 許されないとしています。

 

 そのため,自動車の処分指導に従わなかったことを理由に,生活保護の停止又は廃止処分を行ったとしても,役所が敗訴する可能性が高いことから,最近では,自動車の処分指導に従わない場合でも,生活保護の停止又は廃止処分までは行わないことが多くなってきています。

 しかし,中には,生活保護の停止又は廃止処分を行う役所もありますので,役所が生活保護の停止又は廃止処分を行おうとする場合は,自動車の処分指導に従った方がよいかもしれません。

 もし自動車の処分指導に納得できないため,処分指導に従わず,生活保護の停止又は廃止処分を受けたときは,法テラスを通じて生活保護制度に詳しい弁護士に相談し,裁判所に生活保護の停止又は廃止処分の執行停止を申し立てるとともに,生活保護の停止又は廃止処分の取り消しを求める審査請求や訴訟を行いましょう。

 

 なお,生活保護の停止又は廃止処分を受けると,直ちに生活に困窮する状況にある場合は,裁判所は,生活保護の停止又は廃止処分の効力停止を認める可能性が高く生活保護の停止又は廃止処分の効力停止が認められた場合は,生活保護の停止又は廃止処分の取消訴訟の第1審判決が出るまでの間は,生活保護を受けることができます。

 ただし,生活保護の停止又は廃止日から,生活保護の停止又は廃止処分の効力停止決定日までの間は,生活保護を受けることができないので,注意が必要です。

 

 

(参考)

自動車の保有要件等について

1 通勤用

  課長通知

〔通勤用自動車保有

問(第3の9)

 次のいずれかに該当する場合であって,自動車による以外に通勤する方法が全くないか,又は通勤することがきわめて困難であり,かつ,その保有が社会的に適当と認められるときは,次官通知第3の5にいう「社会通念上処分させることを適当としないもの」として通勤用自動車の保有を認めてよいか。

1 障害者が自動車により通勤する場合

2 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合

3 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車により通勤する場合

4 深夜勤務等の業務に従事している者が自動車により通勤する場合

 

  お見込みのとおりである。

  なお,2,3及び4については,次のいずれにも該当する場合に限るものとする。

(1)世帯状況からみて,自動車による通勤がやむを得ないものであり,かつ,当該勤務が当該世帯の自立の助長に役立っていると認められること。

(2)当該地域の自動車の普及率を勘案して,自動車を保有しない低所得世帯との均衡を失しないものであること。

(3)自動車の処分価値が小さく,通勤に必要な範囲の自動車と認められるものであること。

(4)当該勤務に伴う収入が自動車の維持費を大きく上回ること。

 

 

〔保護開始時において失業や傷病により就労を中断している場合の通勤用自動車の保有

問(第3の9-2)

 通勤用自動車については,現に就労中の者にしか認められていないが,保護の開始申請時においては失業や傷病により就労を中断しているが,就労を再開する際には通勤に自動車を利用することが見込まれる場合であっても,保有している自動車は処分させなくてはならないのか。

 

 概ね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者であって,保有する自動車の処分価値が小さいと判断されるものについては,次官通知第3の2「現在活用されてはいないが,近い将来において活用されることがほぼ確実であって,かつ,処分するよりも保有している方が生活維持に実効があがると認められるもの」に該当するものとして,処分指導を行わないものとして差し支えない。 ただし,維持費の捻出が困難な場合についてはこの限りではない。

 また,概ね6か月経過後,保護から脱却していない場合においても,保護の実施機関の判断により,その者に就労阻害要因がなく,自立支援プログラム又は自立活動確認書により具体的に就労による自立に向けた活動が行われている者については,保護開始から概ね1年の範囲内において,処分指導を行わないものとして差し支えない。

 なお,処分指導はあくまで保留されているものであり,当該求職活動期間中に車の使用を認める趣旨ではないので,予め文書により「自動車の使用は認められない」旨を通知するなど,対象者には十分な説明・指導を行うこと。 ただし,公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住している者については,求職活動に必要な場合に限り,当該自動車の使用を認めて差し支えない。

 また,期限到来後自立に至らなかった場合については,通勤用の自動車の保有要件を満たす者が通勤用に使用している場合を除き,速やかに処分指導を行うこと。

 

 

〔125cc以下のオートバイ等の維持費〕

問(第8の2)

 125cc以下のオートバイ,原動機付自転車又は通勤用・事業用自動車保有の認められた者については,通勤又は事業のための利用に伴う燃料費,修理費,車検に要する費用,自動車損害賠償保障法に基づく保険料及び任意保険料,自動車重量税自動車税軽自動車税,自動車運転免許の更新費用等を必要経費として勤労・事業収入から控除してよいか。

 

 必要最小限度の額を必要経費として控除して差しつかえない。

 なお,任意保険料については対人・対物賠償に係る保険料に限るものである。

 また,自動車税及び軽自動車税については,身体障害者等の場合,減免されることがあるので留意されたい。

 

 

 

 別冊問答集

〇問3-15 自動車による以外の方法で通勤することがきわめて困難な身体障害の程度

(問)

 通勤用自動車の保有が認められる身体障害者の範囲を示されたい。

 

(答)

 自動車による以外の方法で通勤することがきわめて困難な身体障害者の判断は,その身体障害者のおかれた身体機能(特に歩行機能)の程度によるので,一概に等級をもって決めることはできないが,自動車税等が減免される障害者(下肢・体幹の機能障害者又は内部障害者で身体障害者手帳を所持する者については,自動車税,取得税が減免される。)を標準とし,障害の程度,種類及び地域の交通事情,世帯構成等を総合的に検討して,個別に判断することとされたい。

 

 

〇問3-16 公共交通機関の利用が著しく困難な地域

(問)

 課第3の9中の2及び3にいう「公共交通機関の利用が著しく困難な地域」とは,具体的にはどのような地域か。

 

(答)

 「公共交通機関の利用が著しく困難」であるか否かについては,一律の基準を示すことは困難であるが,例えば,駅やバス停までの所要時間や,公共交通機関の1日あたりの運行本数,さらには当該地域の低所得者世帯の通勤実態等を勘案したうえで,自動車によらずに通勤することが現実に可能かどうかという観点から,実施機関で総合的に判断されたい。

 

 

〇問3-13 処分価値の小さいものの判断

(問)

 生活用品のなかで,処分価値が小さいものは保有を認めることとされているが,処分価値が小さいか否かの判断基準を示されたい。

 

(答)

 処分価値の小さなもので保有を認めるべきか否かの判断基準については,全国統一して決められる性格のものではなく,地域の実情等を勘案した上,社会通念で判断することが最も妥当な方法である。

 したがって,保護の実施機関は,地域の実情,世帯の状況を的確に把握した上,その保有の可否を判断されたい。

 

 

〇問3-17 保育所等の送迎のための通勤用自動車の保有

(問)

 自宅から勤務先までは公共交通機関等での通勤が可能であるが,子の託児のために保育所等を利用しており,保育所等へ送迎して勤務するためには自動車による以外に通勤する方法が全くないか,又は通勤することがきわめて困難である場合には,課第3の9中の3に該当するものとして,通勤用自動車の保有を認めて差し支えないか。

 

(答)

 自宅から勤務先までの交通手段が確保されている場合には,まず公共交通機関等の利用が可能な保育所等への転入所を検討すべきである。

 しかしながら,課第3の9の答に示された要件に加え,当該自治体の状況等により公共交通機関の利用が可能な保育所等が全くない場合 若しくは あっても転入所が極めて困難である場合,又は転入所することが適当ではないと福祉事務所が判断する場合においては,お見込みのとおり取り扱って差し支えない。

 

 

〇問3-23 オートバイ及び原動機付自転車保有

(問)

 生活用品としてオートバイ及び原動機付自転車保有は認められるか。

 

(答)

 総排気量125ccを超えるオートバイについては,生活用品としての必要性は低く,自動車の取扱いに準じて取り扱うべきものである。したがって,生活用品としての保有は認められない。

 給排気量125cc以下のオートバイ及び原動機付自転車については,その処分価値及び主な使途等を確認したうえで,次のすべての要件を満たすものについては保有を認めて差し支えない。

1 当該オートバイ等が現実に最低生活維持のために活用されており,処分するよりも保有している方が,生活維持及び自立助長に実効があがっていると認められること。

2 保有を認めても当該地域の一般世帯との均衡を失することにならないと認められること。

3 自動車損害賠償責任保険及び任意保険に加入していること。

4 保険料を含む維持費についての捻出が可能であると判断されること。

 

  

2 障害者の通院等

  課長通知

〔障害者が通院等のため自動車を必要としている場合等の自動車保有

問(第3の12)

 次のいずれかに該当する場合は自動車の保有を認めてよいか。

1 障害(児)者が通院,通所及び通学(以下「通院等」という。)のために自動車を必要とする場合

2 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者が通院等のために自動車を必要とする場合

 

 次のいずれかに該当し,かつ,その保有が社会的に適当と認められるときは,次官通知第3の5にいう「社会通念上処分させることを適当としないもの」としてその保有を認めて差しつかえない。

 

1 障害(児)者が通院等のために自動車を必要とする場合であって,次のいずれにも該当する場合

(1)障害(児)者の通院等のために定期的に自動車が利用されることが明らかな場合であること。

(2)当該者の障害の状況により利用し得る公共交通機関が全くないか又は公共交通機関を利用することが著しく困難であって,他法他施策による送迎サービス,扶養義務者等による送迎,医療機関等の行う送迎サービス等の活用が困難であり,また,タクシーでの移送に比べ自動車での通院が,地域の実態に照らし,社会通念上妥当であると判断される等,自動車により通院等を行うことが真にやむを得ない状況であることが明らかに認められること。

(3)自動車の処分価値が小さく,又は構造上身体障害者用に改造してあるものであって,通院等に必要最小限のもの(排気量がおおむね2,000cc以下)であること。

(4)自動車の維持に要する費用(ガソリン代を除く。)が他からの援助(維持費に充てることを特定したものに限る。),他施策の活用等により,確実にまかなわれる見通しがあること。

(5)障害者自身が運転する場合又は専ら障害(児)者の通院等のために生計同一者若しくは常時介護者が運転する場合であること。

 

 なお,以上のいずれかの要件に該当しない場合であっても,その保有を認めることが真に必要であるとする特段の事情があるときは,その保有の容認につき厚生労働大臣に情報提供すること。

 

2 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者が通院等のために自動車を必要とする場合であって,次のいずれにも該当する場合

(1)当該者の通院等のために定期的に自動車が利用されることが明らかな場合であること。

(2)他法他施策による送迎サービス,扶養義務者等による送迎,医療機関等の行う送迎サービス等の活用が困難であり,また,タクシーでの移送に比べ自動車での通院が,地域の実態に照らし,社会通念上妥当であると判断される等,自動車により通院等を行うことが真にやむを得ない状況であることが明らかに認められること。

(3)自動車の処分価値が小さく,通院等に必要最小限のもの(排気量がおおむね2,000cc以下)であること。

(4)自動車の維持に要する費用(ガソリン代を除く。)が他からの援助(維持費に充てることを特定したものに限る。)等により,確実に賄われる見通しがあること。

(5)当該者自身が運転する場合又は専ら当該者の通院等のために生計同一者若しくは常時介護者が運転する場合であること。

 

 

 別冊問答集

〇問3-18 公共交通機関の利用が著しく困難な障害の程度

(問)

 課第3の12にいう「障害の状況により,利用し得る公共交通機関が全くないか又は公共交通機関を利用することが著しく困難」とは,具体的にどのような者が対象となるのか。

 

(答)

 例えば,身体障害にあっては下肢,体幹の機能障害,内部障害等により歩行に著しい障害を有する場合,知的障害にあっては多動,精神障害にあってはてんかんが該当すると考えられる。

 なお,身体障害の場合に限り,現時点では障害の程度の判定がされていないが,近い将来,身体障害者手帳等により障害の程度の判定を受けることが確実に見込まれる者について保有を認めて差し支えない。ただし,障害認定を受けることができなかった場合には,速やかに処分指導を行うこと。

 

 

〇問3-19 障害者の通院等の用途の自動車の維持費

(問)

 障害者の通院等の用途の自動車保有に際し,維持費について援助が可能な扶養義務者等がいない場合,障害者加算の範囲で維持費を賄うことは認められるか。

 

(答)

 維持費について確認のうえ,障害者加算(他人介護料を除く)の範囲で賄われる場合については,課第3の12の(4)の他法他施策の活用等の等に含まれるものとして,お見込みのとおり取り扱って差し支えない。

 

 

保有自動車の更新等

  課長通知

保有自動車の更新が認められる場合〕

問(第3の23)

 保有が容認されていた自動車が使用に耐えない状態となった場合,自動車の更新を認めてよいか。

 

 次のいずれにも該当する場合であって,自動車を購入することが真にやむを得ないと認められる場合は,自動車の更新を認めて差し支えない。

 ただし,保護の実施機関による事前の承認を得ることを原則とする。その際,保護費のやり繰りによって生じた預貯金等により賄う場合においては,本通知第3の18に従い,不正の手段により蓄えられたものではないこと等を確認すること。

1 保有が容認されていた自動車が使用に耐えない状態となったこと。

2 保有が容認されていた事情に変更がなく,自動車の更新後も引き続き本通知第3の9又は同第3の12に掲げる保有の容認要件に該当すること。

3 自動車の処分価値が小さく,通勤,通院等に必要な範囲の自動車と認められるものであること。

4 自動車の更新に係る費用が扶養義務者等他からの援助又は保護費のやり繰りによって生じた預貯金等により確実に賄われること。

 

 

 別冊問答集

〇問3-14 自動車の保有

(問)

 課第3の9及び12以外に被保護者が自動車を保有することが認められる場合は,どのような場合か。

 

(答)

 生活用品としての自動車は,単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば,地域の普及率の如何にかかわらず,自動車の保有を認める段階には至っていない。 事業用品としての自動車は,当該事業が事業の種別,地理的条件等から判断して当該地域の低所得世帯との均衡を失することにならないと認められる場合には,保有を認めて差し支えない。

 なお,生活用品としての自動車については,原則的に保有は認められないが,なかには,保有を容認しなければならない事情がある場合もあると思われるかかる場合は,実施機関は,県本庁及び厚生労働省に情報提供の上,判断していく必要がある

 

 

〇問3-20 他人名義の自動車利用

(問)

 資産の保有とは,所有のみをいうものか。例えば,自動車の保有を認められていない者が,他人名義の自動車を一時借用を理由に遊興等のために使用している場合は,どのようにすべきか。

 

(答)

 生活保護における資産の保有とは,次第3に示してあるとおり,最低生活の内容としてその保有又は利用をいうものであって,その資産について所有権を有する場合だけでなく,所有権が他の者にあっても,その資産を現に占有し,利用することによって,それによる利益を享受する場合も含まれるものである。

 したがって,自動車の使用は,所有又は借用を問わず原則として認められないものであり,設問の場合には,特段の緊急かつ妥当な理由が無いにもかかわらず,遊興等単なる利便のため度々使用することは,法第60条の趣旨からも,法第27条による指導指示の対象となるものである。これは,最低生活を保障する生活保護制度の運用として国民一般の生活水準,生活感情を考慮すれば,勤労の努力を怠り,遊興のため度々自動車を使用するという生活態度を容認することも,またなお不適当と判断されることによるものである。