生活保護の審査請求をしよう

生活保護の質問に答えます。役所の決定に疑問があったら、生活保護の審査請求をしましょう。

<生活保護と交通事故(続編)> 【問】交通事故に遭ったときは,相手側の保険会社との交渉は 弁護士に依頼した方がよいのですか?

 私は,自転車で走行中に 自転車同士の事故に遭い,相手はケガをせずに,私だけがケガをして,相手の人は,自転車保険に加入していました。

 この場合,「私のケガの治療費」のうち,相手側の過失割合分は,相手が加入する自転車保険から支払われ,私の過失割合分は 生活保護の医療扶助から支払われると思います。

 しかし,相手が加入する自転車保険の保険会社は,事故の状況から判断して,私の過失割合が7割であると主張しています。

 また,警察は,「物損事故でも人身事故でも,保険上の取り扱いは同じであるから,物損事故扱いでよいのではないか。」と言っています。

 

 私は,交通事故処理の素人であり,相手が加入する自転車保険の保険会社は,交通事故処理のプロであるため,相手側の保険会社との交渉を 弁護士に依頼しようと思っていますが,慰謝料を受け取ったとしても,弁護士費用を差し引くと,弁護士に依頼した方が,手元に残る慰謝料の額は少なくなるような気がします。 この件について,何かアドバイスがありましたら,お願いします。

 また,警察は,今回の事故について,物損事故扱いとすることを勧めていますが,物損事故扱いでも自転車保険の取り扱いは変わらないのでしょうか。

 

 

【答】

 あなたが,自転車保険に加入していなくても,あなたが加入している自宅の火災保険に「個人賠償責任特約」が付いている場合は,相手が事故でケガをしているときは,あなたが加入している火災保険の「個人賠償責任特約」から,相手の治療費(あなたの過失割合分)が保険金として支払われますので,双方の保険会社の間で交渉が行われます。

 しかし,今回の場合は,相手がケガをしておらず,あなたが加入している火災保険の「個人賠償責任特約」が使用されないため,相手が加入している保険会社とあなたとの間で,双方の過失割合や慰謝料の額等について,話し合いや交渉を行う必要があります。

 

 あなたが言われるとおり,あなたは 交通事故処理に関して素人であり,相手の保険会社の担当者は,交通事故処理のプロであるため,どんなにあなたが頑張って交通事故について勉強したとしても,相手の保険会社の担当者に太刀打ちすることは 相当 難しく,勉強や交渉などにも かなりの時間を割く必要があります。

 そのため,私は,ある程度 弁護士費用がかかったとしても,相手側の保険会社との交渉は,できるだけ弁護士に依頼した方がよいと思います。

 

 それに,慰謝料について,弁護士に依頼して相手の保険会社と交渉した場合は,自分で相手の保険会社と交渉した場合と比較して,慰謝料が約1.8倍~2倍に増加します。

慰謝料の基準には「① 自賠責保険基準」,「② 任意保険基準」及び「③ 裁判所基準(=弁護士基準)」の3つの基準があり,左から順に慰謝料の額が大きくなります。

 

 保険会社は,通常は,この3つの基準の中の「任意保険基準」で算定した慰謝料を被害者に提示し,弁護士に交渉を依頼しない限り,保険会社は「裁判所基準(=弁護士基準)」で算定した慰謝料を被害者に提示することはありません。 そして,「裁判所基準(=弁護士基準)」は,「任意保険基準」よりも 額が約1.8倍~2倍も大きいので,交通事故によるケガで入院・手術したときは,慰謝料も大きくなり,相手の保険会社との交渉を弁護士に依頼した方が,弁護士報酬などの弁護士費用を支払ってとしても,手元に残る慰謝料が多くなります

 

 しかし,事故によるケガが,入院・手術が必要のない軽症の場合は,慰謝料が少なくなりますので,弁護士報酬などの弁護士費用を支払った場合は,相手の保険会社との交渉を弁護士に依頼した方が,手元に残る慰謝料が少なくなる場合もあります。 このようにケガの程度や 慰謝料の額に応じて,弁護士に交渉を依頼するメリットが大きいか否かについて,十分に検討する必要があります。

 

 また,警察は,明らかに人身事故の場合であっても,被害者に対して物損事故扱いとすることを勧めてくることが多いようです。 この理由は,人身事故の場合は 現場検証等を行う必要があるなど,人身事故扱いの方が,物損事故扱いよりも警察の事務処理の手間が増えるためです。

 

 私が,ケースワーカーをしていた頃に,生活保護を受けている人が交通事故に遭い ケガをしましたが,相手がタクシー運転手で,事故慣れしているため,すべて自分に任せてほしいと言われ,加害者に警察への届出等を任せていたところ,事故発生の6か月後に,その事故が物損事故扱いになっていることが判明しました。

 そのことを知って,その生活保護受給者の方が,「俺は,モノでねえ!」と怒っていたことが,今でも記憶に残っています。

 

 とにかく警察は,「物損事故でも人身事故でも,保険上の取り扱いは同じであるから,物損事故扱いでよいのではないか。」と言ってくることが多いので,絶対に警察に対して強く何回も人身事故扱いにしてほしいと主張すべきです。

 確かに保険会社によっては,物損事故でも人身事故でも,保険上の取り扱いは同じとしている会社もありますが,保険会社によっては,物損事故と人身事故では,治療費や慰謝料の額に差を設けている会社もありますので,警察の言うことを絶対に信用してはいけません

 警察は,法律にあまり詳しくなく,本当に呆れるくらい いい加減なところです。 警察は,たとえ間違ったことを言ったとしても,絶対にそれを認めようとしません。 私は,何度も警察で そのような経験をしています。

 

 もし交通事故に遭ったら,まず法テラスに予約し,交通事故に詳しい弁護士に相談し,その指示に従うことです。 そして,あなたが,その事故により入院や手術が必要な程度のケガをしているときは(ケガが軽症でないときは),相手側の保険会社との交渉を 弁護士に任せてください。 そうすれば,あなたは,事故に関しては特に何もすることはありません。