生活保護の審査請求をしよう

生活保護の質問に答えます。役所の決定に疑問があったら、生活保護の審査請求をしましょう。

<生活保護と火災保険> 【問】アパートの部屋を借りるときは,火災保険には 必ず加入する義務があるのですか?

 私は 生活保護を受けていますが,現在 住んでいるアパートの家賃が,生活保護の上限額を超えているため,役所の担当者から転居指導を受け,生活保護の基準内の家賃のアパートに転居することになりました。

 しかし,新しいアパートの家賃は,以前 住んでいたアパートの家賃より安いのですが,不動産管理会社が加入を勧める火災保険の保険料がかなり高いので,その火災保険に加入するかどうか迷っています。 アパートの部屋を借りるときは,火災保険には 必ず加入する義務があるのですか。

 

 

【答】

 賃貸住宅の契約時の火災保険への加入については,法的には加入を義務付けられてはいませんが,加入しない場合は,賃貸住宅を借りることができないので,つまり,火災保険への加入が賃貸借契約の条件となっていますので,実質的には加入を義務付けられているということになります。

 また,賃貸住宅契約時に火災保険への加入を義務付けても(火災保険への加入を賃貸借契約の条件としても),保険契約の内容が借主にとって不当なものでない限り,消費者契約法には違反しないようです。

 

 しかし,不動産管理会社自身が,紹介する火災保険会社の代理店になっていることが多く,不動産管理会社は火災保険契約で儲けようとしますので(不動産管理会社は,火災保険会社から火災保険契約分の3~4割のバックマージンを受け取ることができるため),不動産管理会社が勧める火災保険の契約内容に,必要のない補償が付いていたり,多額な補償内容となっていたりして,その結果,火災保険の保険料は高額なものとなります。 そのため,必ず契約内容を確認し,契約内容が妥当なものでないときは,家財等の補償額を引き下げる内容の契約に変更すべきです。

 

 例えば,家財の価値が200万円しかないにもかかわらず,補償額が300万円の家財保険に加入したとしても,火災が起こり被害を受けた場合は,実際の家財の価値の200万円しか補償されず,差の100万円分の保険料は掛け損となります。

 

 また,必ずしも不動産会社が紹介する保険会社と契約する必要はなく(不動産会社が紹介する保険会社と契約することを義務付けることはできない。),火災保険の契約内容が賃貸借契約の条件を満たしていれば,他の保険会社との契約でも差し支えなく,補償内容の見直しによって,火災保険料をかなり下げることができます。

 

 例えば,私の賃貸住宅の火災保険(住宅総合保険)の契約内容を見ますと,家財,地震,個人賠償及び借家人賠償の4つに分かれており,それぞれに補償額を設定することができ,その補償額によって保険料が決まります。 この4つの中で,必ず加入が義務付けられるものは,借家人賠償責任特約でしょう。 この借家人賠償責任特約(補償額2,000万円で2年間の保険料は900円程度)は,借家人が誤って火事を起こし,賃貸住宅に被害を及ぼした場合は,この特約により賃貸住宅の損害を補償するものですから,家主(不動産管理会社)は,必ず加入を義務付けると思います。

 

 それに対して,家財及び個人賠償は,火災(台風や盗難等も含む)により家財に損害を受けたときや,誤って他人に被害を及ぼしたときに補償されるものですので,加入や補償額については,基本的には借家人の判断に任されるべきものです。 したがって,家財及び個人賠償については,補償額を低く抑えることができますので,火災保険料は低くなります。 家財及び個人賠償の補償額を低くしても,不動産管理会社は,それに反対することはできません。

 もし不動産管理会社が,火災保険の補償内容の見直し等に難色を示すようであれば,宅建協会や県建築指導課宅建業の免許権限者),市消費生活センターに相談してみてください。

 

 火災保険料は,生活保護の支給対象ですが,地震保険,通常,賃貸借契約において加入が義務付けられていないため,生活保護の支給対象外です。 それにもかかわらず,時々,不動産管理会社から,「火災保険と地震保険はセットであり,地震保険を切り離すことはできない。」と言われることがあります。

 この場合は,生活保護受給者の方には 火災保険料のみを支給し,地震保険料は自己負担してもらうことになりますが,その場合でも,不動産管理会社が勧める火災保険と地震保険に加入する必要はなく,他の火災保険会社の火災保険のみにすればよいだけです。

 

 火災保険について扱う業務は,保険業法上の「少額短期保険業」に該当し,火災保険の加入を求める管理会社は,「少額短期保険募集人」に該当しますので,保険業法の適用を受けますが,このことを知らない不動産管理会社の社員が多く見られます。 不動産管理会社の社員には,いい加減な人が多く,法律に詳し人は少ないので,注意してください。

 

 また,賃貸借契約の締結や更新にあたって,不動産管理会社が,家財保険の補償額が一律で,地震保険等がセットになっているような特定の火災保険に加入を義務付け,その保険に加入しないときは,賃貸借契約を締結又は更新しないとした場合は,「圧力募集」として保険業法違反となる可能性が高くなります。

 

 県民共済の火災保険料はかなり安く,民間保険会社の4~5割程度です。 ただし,県民共済の火災保険には 個人賠償責任保険が付いてないため,別途,個人賠償責任特約を付ける必要がありますが,個人賠償責任特約の保険料は安いので,個人賠償責任特約を付けておいた方がよいと思います。 個人賠償責任保険・特約は,例えば,自転車に乗っていて,通行人などの第三者にケガをさせた場合等に,被害者の治療費や慰謝料などが保険から支払われますので,別途,自転車保険に加入する必要はありません。

 

 さらに,24時間サポートサービスに加入を義務付けている不動産管理会社もありますが,これは,抱き合わせ販売として独禁法違反や 宅建業法違反となる可能性があります。

 

 また,転居に伴い前住居の火災保険(住宅総合保険)を解約した場合は,解約日の翌日から契約満了日までの期間の保険料が戻ってきますが,この解約返戻金については,生活保護の取り扱い上,8,000円を超える額が収入として認定されます

 

 最後に,知らない人が多いのですが,火災保険は 住宅総合保険であり,火災だけでなく,台風や大雨,盗難などによる損害に対しても補償されますので,台風や大雨,盗難などによって損害を受けたときは,契約内容を見て 保険会社に保険金を請求しましょう。