<生活保護と鍵交換代等> 【問】アパートに入居する際に,生活保護では 鍵交換代や部屋の消毒代は支給してもらえないのですか。
私が現在 住んでいるアパートは,生活保護の基準内家賃を越えているため,役所の担当者から転居指導を受け,不動産会社に頼んで,今回,新しいアパートを見つけました。
しかし,新しいアパートの不動産管理会社から,入居時に 敷金や仲介手数料の他に,鍵交換代2万円と部屋の消毒代2万円の計4万円を支払うように言われ,役所の担当者からは,鍵交換代と部屋の消毒代は 生活保護費として支給できないので,自己負担になると言われました
鍵交換代と部屋の消毒代の計4万円は,私にとっては負担が大きいので,どうしたらよいのか悩んでいます。 何かアドバイスがありましたら,お願いします。
【答】
生活保護を受けている方が,新しい住居に転居する際に 生活保護で支給できる項目は,引っ越し代(移送費)や「敷金等」があります。 この「敷金等」とは,敷金,礼金,仲介手数料,保証会社の保証料,火災保険料の5項目を言い,鍵交換代や部屋の消毒代は 支給対象項目には入っていません。
この理由は,鍵交換代や部屋の消毒代については,本来,賃貸人が負担すべきものであり,賃借人が負担すべきものではないからです。 アパートの部屋は,住むことができる状態にして賃借人に貸すべきものであるので,鍵交換代や部屋の消毒代は,当然,賃貸人が負担すべきであり,賃借人に負担させることは適当でないと考えられています。
例えば,国土交通省が作成している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には,「鍵の取替え(破損,鍵紛失のない場合)」については,「<考え方> 入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり,賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。」とされ,また,「全体のハウスクリーニング(専門業者による)」についても,「<考え方> 賃借人が通常の清掃(具体的には,ゴミの撤去,掃き掃除,拭き掃除,水回り,換気扇,レンジ回りの油汚れの除去等)を実施している場合は,次の入居者確保のためのものであり,賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。」とされています。
このガイドラインには 法的拘束力はありませんが,判例や実例等をもとに作成されていますので,訴訟になったときは,裁判所は,このガイドラインに沿った判断を示すことが多く,また,不動産会社に このガイドラインを示したときは,このガイドラインの内容に従う会社もありますので,不動産会社にこのガイドラインを提示して,鍵交換代や部屋の消毒代の支払いについて交渉してみてください。
また,不動産業界団体の相談窓口として,(公益社団法人)全国宅地建物取引業(保証)協会がありますので,そこに相談する方法がありますが,業界団体の相談窓口であり,会員である不動産業者に対する強い指導力はないという意見もあります。
次に,宅地建物取引業の免許権限者である都道府県 又は 国土交通省の地方整備局の相談窓口に相談する方法があります。 その不動産業者が 県知事免許か大臣免許かについては,免許番号に記載されています。
さらに,消費者契約法の関係で,消費生活センターに相談する方法もあります。
それでもなお,不動産会社から,鍵交換代や部屋の消毒代を支払わない場合は,部屋を貸すことはできないと言われたときは,我慢して鍵交換代や部屋の消毒代を支払い そのアパートを借りるか,又は,そのアパートを借りることを諦め,他の不動産会社に 鍵交換代や部屋の消毒代を支払う必要のない 別のアパートの紹介を依頼するしか適当な方法はないと思われます。
しかし,以前は,賃借人に 鍵交換代や部屋の消毒代の支払いを求める不動産会社が多かったのですが,最近は,そのような不動産会社は 次第に少なくなり,鍵交換代や部屋の消毒代を支払う必要のないアパートも増えてきていますので,地道に あなたの希望に合うアパートを探してみてください。